1. アオキの薬剤師って?

ペットを飼う。信じられないかもしれませんが、ただそれだけのことが、私達夫婦にとっては決心しがたいことでした。ペットがいたらさぞかし幸せだろうという話が、夫婦の間で何度も繰り返されるだけなのです。不妊完治の見込みが薄く、日々の生活で汲々となっている私達が迎えられる家族といえば、ペットぐらいしかいないというのに、です。
「猫って楽そうだけどなあ、いきなり家出するっていうからなあ」
「犬は懐くんでしょ? 死ぬときに辛いよね」
「魚は飼い主のことわかんないだろうなあ」
 周囲のペットを飼っている人に聞いて回っては、それはいい、飼おうなどと家に帰り、知りもしない欠点をあげつらって先延ばしにする。なんでもいいからペットが欲しいと言っていたくせに、いざ決めるとなると、尻込みしてしまう。決めるというただそれだけのことができず、私達夫婦は新しい家族への思慕を募らせていきました。

ドッグシェルターや保健所にだって、何度も行ったのです。檻の中でせわしく吠える犬達を見て、心の底から同情を覚え、ああ、この子を助けてあげたい、私達の家族として、叶うことのなかった愛を与えてあげたい。そう願うのです。願いながら、決められないのでした。私達はもじもじしながら、シェルターのボランティアや保健所の係員に向かって、「また来ますので」と頭を垂れました。みんな優しい方達でしたから、「決心がついたらまた来てください」と、笑顔を向けてくれました。帰路、行き場無く、電車の吊革を弄んで、「次は絶対決めようね」などと言い合いました。絶対。決心。決める。みな、私達には手の届かない言葉でした。私達の生活では、決心が良い種となったことは一度もなかったのです。 その癖、情報収集だけは周到でした。私達は、よく本を読みました。『ねこのきもち』、『いぬのきもち』などといった雑誌を手にとっては、ああでもない、こうでもないと言い合いました。それも、図書館の雑誌コーナーで。私達のつましい収入では、おいそれと雑誌を買うことなどできません。そんな私達が一二六〇円も出して買ったのですから、「THE PIG Photo Book」は単なる一書籍に止とどまりませんでした。